2019年も残りわずかです。ウオッチドッグデスクとウオッチドッグ記者が本音で語る「メディア遊歩道」で、1年間の報道を振り返ります。

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ウオッチドッグデスク
2019年もいろいろな問題がありました。ウオッチドッグも、湖南有線放送のスクープから始まり、滋賀県政や大津市政の問題を、独自の視点で取り上げてきました。
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ウオッチドッグ記者
取材時はがむしゃらでしたが、次から次へといろんなことが起きましたので、ひとつひとつの報道がだいぶ前のことのようにも感じます。
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報道各社の動きを意識することがあります。今年一番気になったのはどんな取材・報道でしたか?
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大津市の越直美市長の不出馬会見の報道ですね。大手メディアが、越市長を絶賛した報道には驚きました。
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端的に言えば、今年の「ワースト1」ですね。「ベスト1」がなくて、「ワースト1」ははっきりしている、というのもちょっと悲しいですが。
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何なんですかね。これまで、公文書の破棄やら、政治手法やらを批判してきた新聞社すらも、8年間の越市政を客観的に検証することなく、「マニュフェスト達成した」、「全身全霊を尽くした」という市長の言葉をそのままタイトルに使って大絶賛する記事を書いていました。
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「笑顔で会見」(京都新聞)、「『約束達成』晴れやか」(中日新聞)、「全身全霊8年」(読売新聞)、「全力で公約達成」(朝日新聞)、「全身全霊尽くした」(毎日新聞)、ですからね。そんなに「スーパー市長」だったのでしょうか?
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実際、越市政に対して、市民はどう思っているのか、足で取材して聞いて回って「コメント」を書いてほしかったです。市民の声を拾っていませんでした。
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「公約達成」と言っても、年を追うごとに巧妙にハードルを下げていた。当初掲げた公約に比べれば「低いハードル」なので、達成したことになってしまう。市政担当記者には、そこを見抜いてほしかったですね。市長が「公約達成」と言えば、そのまま無批判に記事にしてしまう。
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こういう課題が残っているから、引き続き継続して取り組んでほしいとか、そんな言葉が、越市長からはひとつも出てこない。誰も疑問に思わなかったのでしょうか?
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菅義偉官房長官の記者会見で、前の方に座っていながら、ノートパソコンに向かって、パタパタとキーボードを叩いている記者が多いことを想起します。菅長官の表情を見ずに、手元のディスプレイだけに向かっている。「権力側」が言ったことをそのまま書く。速記ロボット。記者クラブが専門の速記者を雇えばいいのに。
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「速記ロボット」とは面白い表現ですね。
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各社の報道を見た私の感想は「なんでこんなに褒めちぎるのか、気持ち悪い」。越市長は自分の実績を自画自賛、さらには過大評価していますよね。
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市長の話を聞いてそのまま「ヨイショ」記事に仕立てる。「なぜ?」と驚くと同時に、市長と記者らとの関係性にますます疑念が生じました。
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越市長の会見も滑稽なら、発言通り書いてしまった記者たちも滑稽では? まさに現代の「滑稽」新聞のオンパレードですよ。
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でも、明治の滑稽新聞は、とことん権力を批判し、滑稽に仕立てて嗤う。「権力を嗤う」のが、宮武外骨「滑稽新聞」の本髄でした。
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もちろん、宮武外骨が名付けた「滑稽新聞」とは違います。大津市政をめぐる報道は、権力批判なんてさらさらない、その名通りの「滑稽」な現代の新聞です。
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権力を滑稽に仕立てて嗤うのではなく、記者が滑稽な記事を書いて嗤われるなんて、情けない話ですよ。
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記者会見場にいなかったのですが、おそらく、批判的な質問をするような空気ではなかったのだと思います。それを不思議にも何にも思わず、会場の空気通りの記事になったのだと思います。恐ろしいことですが、記者たちは、変な記事を書いてしまったとは全く思っていないと思います。自覚のない「ポチ」の集まりです。
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市民と新聞社の間に、乖離があるのではと感じていますが。
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「何だ、この記事は?」と思った読者はいると思いますが、読者・視聴者の声が、新聞・テレビに届きにくくなっているのかもしれないですね。
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今はいろんな媒体があるので、疑問に思ったことを自ら発信できますので、わざわざ声を届けるということが少なくなっているのかも。
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2020年はますますAI(人工知能)に注目が集まると予想します。記者会見をそのまま伝える、あるいは要約して伝える、ぐらいなら「AI記者」がやってしまう時代はすぐに来ると思います。来年のウオッチドッグはどうなりますか? AIに負けないような報道ができますか?
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発表報道の速記なら、それこそ、AIでもできますが、ウオッチドッグ記者はしつこく、とことん調査報道をしていきます。AIがウオッチドッグ記者と同じように、しつこく取材ができるのなら話は別ですが。
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越市長は任期満了で退任する時に、本当の退任記者会見がありますから、また「賛美一辺倒」になっていないか、目を光らせることにしましょう。
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市長の不出馬会見で「賛美一辺倒」の記事を書いた報道機関が、退任記者会見で、軌道修正できるのかどうか疑問ですが、2020年の注目報道のひとつとして見ていきます。

↓参照:過去のウオッチドッグ報道

「公約達成」を鵜呑みに/報道は実績を絶賛/越市長の不出馬会見/ウオッチ大津№156

こうして市政記者は簡単に騙される/小手先の「修正案」がピカピカの「新案」へ/ウオッチ大津№150

名ばかりの「憤懣」報道/県・市・組合を追及せず/湖南有線放送の電柱問題/メディア遊歩道№3