ウオッチドッグはこれまで、大津市の地区環境整備事業補助金(迷惑料)と、市民らが提訴した裁判を取材してきた。取材を重ねたウオッチドッグの視点で、2月12日に大津地裁(西岡繁靖裁判長)が下した判決を読み解く。
大津地裁の判決文は、まず、各争点に対する当事者の主張を整理し、最後に裁判所の判断を示すという構成になっている。1番目の争点である、迷惑料の支出に関する「大津市の裁量の範囲」をめぐっては、7ページから9ページまでに、原告側の市民の主張と、被告側の大津市長(大津市)の主張が述べられている。そして、45ページから46ページまでに、この争点についての大津地裁の判断が書かれている。
■原告(大津市民)の主張
・迷惑料の支出は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が定める生活環境の保全の目的に限って補助金の支出が認められる。
・大津市の裁量は、2003年に設けた「基準」に限定される。
・つまり、迷惑料の支出が違法かどうか、「公益性」があるかどうかは、以下の項目で判断される。
ア:補助金の支出が生活環境保全の目的によるものであること。
イ:地元住民との間に締結した覚書・協定書等文書で明記されたものであること。
ウ:特定の個人又は団体の利益につながる事業、宗教活動、政治活動等につながる事業、公共の秩序及び善良な風俗を害する事業でないこと。
エ:財政負担が大きくないこと。100万円以上500万円未満は余り大きくないが、500万円以上は大きいとされる。
オ:受益が及ぶ範囲が広いこと。
カ:公平性があること。
キ:地元負担があること。補助率は補助対象経費の2分の1以下を基本とする。
ク:事業の必要性があること。
■被告(大津市長)の反論
・迷惑料は地方自治法に基づいて交付されたもので、大津市に広範な裁量権が認められている。
・迷惑料の支出は、生活環境保全の目的に限定されるものではない。
・大津市が設けた「基準」は一応の基準であり、違反したからといって「公益性」がないとは言えない。
■大津地裁の判断
・補助金の「公益上必要」かどうかの判断は、市長に裁量権がある。
・大津市が一般廃棄物処理施設の設置を進めるためには、周辺住民の理解を得ることが重要な課題である。周辺環境の保全だけでなく、増進にも配慮することも含まれる。それらは「公益」に該当する。
・住民の理解を得るために補助金を支出することは、市長の政策判断として尊重されるべきである。
・大津市が設けた「基準」は、市長の裁量権の限界を決めるものではない。違反しても、裁量権の逸脱・濫用とは言えない。
↓争点(1)大津市の裁量の範囲/原告の主張と被告の反論(7ページから9ページ)
↓大津地裁の判断/争点(1)大津市の裁量の範囲(45ページから46ページ)
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