市は放置電柱の危険性を認識

2019年現在、旧湖南有線放送の多数の電柱が、市道や民有地のあちらこちらで、撤去されず取り残されている。しかし、大津市は、県へ要望書を提出した後、沈黙している。8年前の2011年7月1日、県と市の協議の場で、市職員が「最悪、死亡事故などがあればどうするのか」と発言していたように、市はその危険性を十分、認識していた。電柱の占有位置調査に動き出していた2010年10月の県と市の協議では、市の福井英夫農林水産課長(当時)が、木柱の腐食実態や、コンクリート柱の空洞化、ヒビ割れの状況を県職員に説明し、残存電柱の写真を県へ提出している。

ところが、残存電柱のヒビ割れを撮影した写真や、「県道建柱一覧」などの資料を、大津市は保存・保管していない。ウオッチドッグが市へ情報公開請求しても出てこなかった。

↓2010年10月18日/滋賀県が保存していた「湖南有線放送農業協同組合について」

「電線柱の処理に責任ない」と市

湖南有線放送に関する協議録の大部分を大津市は保存していない。残されているのは、2014年と2015年に行われた計3回分だけ。2014年8月5日に行われた市総務課協議では、「責任所在」について、「市は組合の運営について補助金を支出したが、電線柱の処理について責任がない。責任は湖南有線放送にあり、市は、その責任を代理、代行すべきではない。有線柱ならびに電線の処理について公費を支出する根拠はない」とまとめている。

↓2014年8月5日・大津市総務課と農林水産課の協議/湖南有線放送農業協同組合について

【解説】市は組合を優遇/運営実態を知る立場

大津市は「責任は組合にある」と突き放した発言をしている。しかし市と組合との関係は長く、しかも深い。市は市有地を長年、組合へ事務所用地として無償提供していた。営利目的の組合へ、市有地の使用貸借していたとみられる。それだけでなく、業務停止直前の2000年も、市補助金180万円を支出していた。市は組合の活動実態や、役員の状況、電柱のメンテナンス実態など、運営の実態をどこよりも知り得る立場にあった。市農林水産課が、組合の事務運営をしていたという事実も県が保存する記録に残されている。市自治協働課と、大津市自治連合会の関係のように、“切っても切れない”特別な関係だと推測される。

2003年の業務停止した時点で、市は組合へ、市道にある電柱の撤去費用を請求をすればよかっただろうし、市が民地に電柱のある住民らへ適切な案内をしていれば、住民らも組合へ「撤去費用」を請求できたはずだ。2003年に、登記されている代表理事の田中亥一氏も、当時は存命していた。やればできたはずなのに、なぜ、大津市はやらなかったのか。

湖南有線放送の歩みと滋賀県と大津市の対応(時系列)/ウオッチドッグ作成

ウオッチドッグが、入手した県と市の公文書を元に、これまでの経過を時系列にまとめた。

次ページでは、大津市の有線放送事業を振り返る。

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