なぜ、ここまで手の込んだことをするのか。

大津市によるデータの操作、いわゆる“印象操作”のことである。大津市は市民センター統廃合問題をめぐり、政策遂行に都合のよい情報を過度に強調し、逆に都合の悪い情報を隠してきた。市民に提供する際、大津市はかなり込み入った方法を用いて、データを操作している。日々の生活に追われる市民が、“ウソ”を見抜くのは容易ではない。ウオッチドッグは、市民を欺く一連の作為的なデータ操作を、“印象操作”と呼んでいる。

これまで大津市は、数々の“印象操作”を行ってきた。ウオッチドッグは調べを尽くし、できる限り報道してきた。

例えば、大津市は7月17日に行った、行政改革の“専門家”4人を集め、選ばれた市民22人に対して会合を開いた。市は未だにこの会合を「意見交換会」と呼び、9割が「見直しが必要」と応えたアンケートを掲げている。しかし、この会合は、市民だけが参加して開かれた他の「意見交換会」とは明らかに性格が異なるものだ。ウオッチドッグは<行革専門家会議>と呼びことにしている。

7−8月には、市民が自主的に参加した意見交換会が計3回開かれている。これらに参加した市民は合計198人に上る。そこでは「現状のままでよい」という市民の意見が6割を超えた。ところが、このデータと、<行革専門家会議>のデータを、全く同じ大きさのグラフでHPに今なお掲載している。これでは、市民の声の実態をねじ曲げて伝えていることになる。

市民の声を印象操作/実際は「現状のままでよい」6割超/市のホームページ/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№83

また、大津市は意見交換会で出た市民からの厳しい声を、HP上に掲載していない。

市民の厳しい声は掲載せず/修正後も市のHP/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№84

ウオッチドッグは、大津市が取り上げようとしない生の声を、「市民の声シリーズ」として、7回にわたって、テーマごとに伝えた。

【市民の声シリーズ①】「避難所運営は?」/防災編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№85

【市民の声シリーズ②】「一方的な話にしか聞こえない」/不満相次ぐ/運営編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№86

【市民の声シリーズ③】「市に都合のよい資料」/情報開示編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№87

【市民の声シリーズ④】「高齢者を粗末にした冷たい市政」/サービス低下編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№88

【市民の声シリーズ⑤】「公民館でも可能では?」/コミュニティーセンター編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№89

【市民の声シリーズ⑥】「先に削るところを削って」/財政編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№90

【市民の声シリーズ⑦】「市の下請け?」/自治会編/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№91

市が行っている悪質な“印象操作”は、最も新しい、市民に対する説明資料「市民センターのこれからのあり方について」(スライド形式、全49ページ)の中でも行われており、堂々とHPにも掲載されている。

http://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/145/20180712.pdf

例えば、「大津市を取り巻く環境」の中で、「公共施設の老朽化」に2ページを割き、棒グラフや円グラフを使って、「建築後30年以上の建物の割合61%」などと強調している。多くの人が、市民センターが老朽化していると思って、資料を読むのではないか。しかし、トリックがあり、このデータは大津市が保有する建物全体を指している。市民センターの6割が築30年以上たっているわけではない(実際は半分にとどまっている)。36ある市民センターのうち、耐用年限が20年以上の建物が9割を占めているが、説明資料の中では全く触れていない。

「使用可20年以上」が9割/「老朽化」は根拠なし/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№116

幼稚なトリックもある。県内にある各市が設置した市民センターの数を単純比較したグラフである。大津市以外で数が多いのは長浜市の「8」だ。そこで大津市の「36」だけを、棒グラフの色を変えて「県内他都市と比べて支所が多い」と主張する。恐れ入りました。さすがに、市民との意見交換会でも、「大津市は人口が多いから、市民センターの数も多くなる」「琵琶湖を取り巻く大津市の地理的条件が考慮されていない」という批判が相次いだ。

「近隣中核都市の支所設置状況」は、手の込んだトリックを用いている。ここでも、岐阜市や奈良市などと比べ、大津市が突出したような棒グラフが作られてている。ここでも目立つ色を使い「近隣中核都市と比較しても支所が多い」と、白抜きのフォントを用いて、とにかく強調している。ところが、2016年度に、大津市は全国の中核都市について調査を行っている。市民センターの数としては、「富山市79」、「和歌山市48」などのデータがある。大津市の「36」を大きく上回っている。しかし、意図的に紹介していない。市民には大津市よりも多い都市があることを、説明していない。これでは、都合のよいデータを恣意的に並べたに等しい。

市民センター「コストは廉価」/人件費を抑制/中核都市との比較で/ウオッチ大津№117

さらに、悪質なのは、10―11月に行われた市民との意見交換会では、配付資料の中身を差し替え、このような不公正、不適切なデータを削除し、防災などに関する情報を加えたことだ。これについての説明はまったくなされていない。直接、市民からの批判は聞きたくないから外したのだろうか。HPには掲載されたままだから、小手先の目くらましで、意見交換会を乗り切ろうとしたとみられる。

配布資料を大幅差し替え/他都市との比較を削除/防災機能は追加/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№106

仮にも、不公正・不適切なデータがあったと認めるのであれば、大津市は市民に対して辛うじて誠実だとも言えよう。ところが、意見交換会の配付資料からは除外しても、いまなおHPには掲載している。つまり、データをごまかし、“印象操作”を繰り返していることについて、反省している様子はない。

越直美市長は、記者会見でも、市民との意見交換会に12回も足を運んだかのように語り、「多くの方はやっぱりわかっていただだいていると思います」と述べている。実際は3回だけ。36学区ごとに10月から11月にかけて開かれた市民との意見交換会には、一度も参加していない。記者会見における一種の“印象操作”と言ってよい。

【検証】越市長と市政記者の“なあなあ”会見/市民センター統廃合問題/ウオッチ大津№115

ウオッチドッグが、市民センター統廃合問題に注目しているのは、市民一人ひとりの日々の生活に直結した問題だからだ。特に防災対策の観点から、市民センターを統廃合した場合、どのような影響が出るのかは、ほとんど議論されていない。

大津市はやるべきことをやっていない。その代わり、手間のかかる、巧妙な“印象操作”を重ねている。誰のための市民センターなのか。なぜ、市長も職員も、データのごまかしにそこまでエネルギーを注ぐのか。市民を欺き続けることに痛痒を感じていないとしたら、大津市政は末期症状にあると言える。